
6月17日(水)おはようございます。ページワンスタジオです。本日も、クリエイティブ業界の動向をざっとみていきましょう。
まず国内面。日銀が昨日の金融政策決定会合で利上げを決め、政策金利を31年ぶりの高水準となる1%程度まで引き上げました。「金利のある日常」の最初の朝となりました。住宅ローン・預金・物価——生活者の財布への影響に関するニュースが、一定期間、報道を席巻することでしょう。
一方で国際面では、フランス・エビアンで開幕したG7サミットでの動向が注目されています。SNSでは会場での各国首脳のようすの映像などが投稿され、停戦合意がなされたと報道されているイラン情勢や、ウクライナでの状況が主要議題になっているとのこと。こちらも注目が集まっています。
そしてスポーツ面では、カナダ、メキシコ、アメリカW杯でフランスが、エムバペが2得点と大活躍で、セネガルに快勝。日本代表の初戦・対オランダ戦は一昨日試合が行われましたが、結果と反響が今週の空気を引き続き作っています。「利上げ・G7・W杯」という三つの大波が重なる水曜日。生活者の感情の振れ幅が大きく、コミュニケーションの「着地点の設計」が問われています。
では、世の中のことをざっとおさらいしたところで、クリエイティブ業界ではどういう動きがあったのでしょうか。さっそく見ていきましょう。
① Google「Gemini」CM——「身近な友人に話しかけるように」という広告戦略
Googleが6月のCM最新情報として、AIアシスタント「Gemini」のCMを展開中です。すでにGeminiを生活の一部に組み込んでいる方もいらっしゃるかもしれません。「身近な友人に話しかけるように自然な会話で、日々の疑問から楽しい企画までAIが手厚くサポートしてくれる魅力が詰まったCM」として展開されています。
メモ:「友人のように」という比喩でAIを定義しています。これは先日発表されたChatGPTでのAI広告の文脈問題(AIはKYか問題)に直結する話だと考えています——つまり「友人だと思っていた人が急に欲しくもない商品をおすすめしだす」とはどういうことか、というメッセージを自らCMで言っていることになりませんでしょうか。意図的かどうか、いいか悪いかは別にしても、皮肉な構造だなと思いました。
② マクドナルド「FIFAワールドカップセット」——ベッカム・アンリ・ロナウジーニョ起用
マクドナルドがFIFA W杯セット「juggle」篇・「オールスター」篇でデビッド・ベッカム、ティエリ・アンリ、ロナウジーニョ、ソン・フンミン、ラミン・ヤマルを起用したCMを展開中です。
メモ:現役スターではなくレジェンドを複数起用する企画となりましたが、「サッカーを愛する全世代」への間口を最大化する戦略なのかもしれません。「知っている顔」が記憶の引っかかりを作る。W杯スポンサーとしての広告投資として、教科書的といえるのではないでしょうか。
③ デニーズ「Wellness」グランドメニューリニューアル——「頑張らなくていい健康」の言語化
デニーズが6月10日からウェルネスをテーマにグランドメニューを大刷新。「好きなものを楽しみながら、気づけば体にいいことができている。そんなに頑張らなくても、ちゃんと満たされる食体験をお届けします」というコンセプトを打ち出しています。
メモ:「健康」を「頑張るもの」から「気づいたらできているもの」に再定義するコピー設計。ウェルネス市場で溢れる「ストイックさ」の真逆を行く切り口ですが、「そないに頑張らなんでも…」という言葉が生活者に刺さるのかもしれません。みんな、なんかしら疲れてるんですね。おつかれさまです。
④ 日銀利上げ——住宅・金融ブランドのコミュニケーション転換点
冒頭でも取り上げましたが、日銀は政策金利を「1%」程度に引き上げます。31年ぶり金利水準で、変動型住宅ローンなど暮らしへの影響が今日から本格的に議論される。預金金利の上昇も期待される一方、ローン返済者への圧迫も懸念されます。
メモ:「不安に寄り添うか」「チャンスを示すか」——今日から住宅・銀行・保険ブランドのトーン設計が見直させることでしょう。「金利が上がった=預金が増える」と「金利が上がった=ローンが怖い」は同じ事実の裏表。どちらの感情に乗るかでコピーが180度変わりますよね。
① 米イラン「戦闘終結覚書に署名」——中東緊張緩和で原油下落、広告市場に追い風
アメリカとイランが、戦闘終結の覚書に署名したとの情報が世界中にもたらされ、NY原油が一時80ドル割れと3カ月ぶりの水準に下落しました。
メモ:原油高・物価高が緩和方向に向かうと、消費者心理は多少上向くでしょう。「不安モード」から「前向きモード」へのシフトが起きるときに、コミュニケーションのトーンをどう切り替えるかが問われます。空気の変わり目を読む力がクリエイティブディレクターには必要ですね。
② 「AIで生産性は上がったのに、なぜ儲からないのか」——ROI2倍を実現した組織設計
AIで生産性が向上しても収益に結びつかないという課題に対し、ROI2倍を実現した組織作りの事例が注目されています。AX(アドバタイジングトランスフォーメーション)がカギとされています。
「デニーズ「そんなに頑張らなくても」——引き算のコピーが市場を定義する」
今日の学びは、デニーズの「好きなものを楽しみながら、気づけば体にいいことができている。そんなに頑張らなくても、ちゃんと満たされる食体験」というコンセプトから。
ウェルネス市場は今、言葉の過剰競争が起きているようにみえます。「体に良い」「栄養満点」「健康的な選択を」——どのブランドも似たような言葉を使っている。そんな中デニーズが選んだのは「頑張らなくていい」という正反対の言葉でした。健康であり続けるには頑張りを維持する必要があります。ですが「頑張らなくていい」と疲れた生活者の心に刺さるのには理由がある。「そんなに」という副詞の柔らかさも効いている。「頑張るな」ではなく「そんなに頑張らなくてもいいんですよ」——この微妙なトーン調整が、押し付けにならない寄り添う言葉として成り立っているから、共感を得られるんだと思います。
引き算のコピーワークが市場を再定義する。それは「マーケとブランドの分断」を超えて、商品設計とコミュニケーション設計が一体になったときに初めて生まれる言葉なのかもしれませんね。
以上、本日の朝刊でした。
それでは本日も1日、ページワンスタジオをどうぞよろしくお願い致します。
謹んで新年のお慶びを申し上げます。
旧年中は格別のお引き立てを賜り、誠にありがとうございました。
昨年も弊社の広告制作物が、2025年日本産業広告賞雑誌部門にて第3席の評価をいただきました。
弊社は本年も引き続き、デザイン・クリエイティブの力で、お客様のビジネスをしっかりと支援してまいります。
2026年も変わらぬご愛顧のほど、何卒よろしくお願い申し上げます。
2026年 元旦
株式会社ページワンスタジオ
代表取締役 青木 唯史