
おはようございます。10月19日(月)です。
デザイン事務所ページワンスタジオが提供する The PageOne Times。
昨日おこったクリエイティブ領域の出来事をピックアップしてお伝えします。
週明け早々、日経平均が一時1400円超安と大幅下落でスタートしました。先週のコアウィーブ・ショックの余波が続いており、日本株の「魔の10月」がまだ終わっていません。台風30号が非常に強い勢力を維持したまま週半ば以降に沖縄・奄美への影響が予想されています。政治面では高市首相が靖国神社への秋の例大祭参拝を見送り、玉串料を私費で奉納しました。横浜市長選では新人の原澤敦美氏が初当選しています。
そして今朝、アンソロピックが株式の5%を公益基金に拠出すると発表しました。AI失業者支援などに活用する方針で、AI企業として異例の社会的責任の表明です。また日本サッカー協会の公式アプリへの不正アクセスが明らかになり、サイバー攻撃の波は止まっていません。
「株安・台風・アンソロピック基金・サッカー協会不正アクセス」という慌ただしい月曜日です。
では本日も、クリエイティブ業界の動向をざっとみていきましょう。
① 厚労省がタイアップ広告ガイドライン策定——「炎上」が行政を動かした
厚生労働省が映画やドラマとタイアップして政策を周知する広告について、作成時の注意点をまとめたガイドラインを本日策定しました。がん患者支援向けポスターがSNSで炎上したことを受けた対応で、「当事者に受け入れられるか」「誤解や偏見を助長する恐れはないか」を関係者に確認することを盛り込んでいます。法務省では元暴走族が出演するネット番組とのタイアップが炎上し取りやめた事例もあり、「炎上をどう防ぐか」が各省庁共通の課題になっています。
主観:官公庁のタイアップ広告が相次いで炎上した背景には、「話題のコンテンツに乗れば届く」という安易な発想があります。先週話した「当事者に受け入れられるか」という問いは、民間企業の広告にも同様に当てはまります。タイアップ設計の出発点は「誰が傷つくか」を想像することです。
② 生成AI広告の炎上事例2026——「ブランドへの冒涜」と「クリエイター軽視」が主な火種
2026年現在、生成AI活用の炎上リスクが複雑化しています。品質問題だけでなく、「ブランドへの冒涜」「クリエイター軽視」という倫理観・感情面での反発が主な火種になっているという分析が出ています。
主観:「職人の手仕事や温かみを売りにしているブランドがAI生成画像を使うと、こだわりを捨てたと受け取られる」という指摘が核心です。AIを使うかどうかより「そのブランドがAIを使うことに必然性があるか」を問う時代になっています。
③ アンソロピック「株式5%を公益基金へ」——行動が信頼を作るのか?
アンソロピックが株式の5%を公益基金に拠出すると発表しました。AI失業者支援などに活用する方針で、「AIが引き起こすかもしれない社会的影響に責任を持つ」という宣言です。
主観:先週のピックアップ「正直であること、誠実であることは最初で最後の砦」の実践例として今週最初に届いた一本です。コミュニケーションではなく「行動」で信頼を作るパーパスブランディングの純粋な形として学べます。
④ 企業採用にAI面接が拡大——採用広報の設計が変わる
産経新聞が「企業の採用でAI面接が広がっている」と報道しました。効率化と公平性を求める企業と、「AI面接では自分の魅力が伝わらない」という就活生の声が交差しています。
主観:採用広報のコミュニケーション設計が変わります。「AI面接でどう映るか」を意識した自己PRが求められる時代に、「人間らしさ」をどう言語化するかがますます重要になっています。
① 博報堂「Branded AI Agent」——ブランドに”生きた人格”を宿す実装最前線
博報堂がMarkeZine Day 2026 Onlineで発表した「Branded AI Agent」の実装レポートが話題を集めています。「AIによる最適化を繰り返すほど、ブランドの個性は薄れ同質化していく」という課題に対し、ブランドを”生きた人格”としてAIに実装する取り組みです。約8割のブランド担当者が「AI活用による没個性化」に懸念を抱いているという調査結果も示されました。
主観:「ブランドが生きていたら、どのように世の中を見て、生活者にどう語りかけるか」——これはコピーライターが長年やってきた問いそのものです。AIがその「人格設計」を実装する道具になるとすれば、人格を言語化する仕事はますます重要になります。「ブランドらしさがにじみ出る」という表現が今日の白眉です。
② 「AI時代、企業のクリエイティブ組織は何を守り、何を変えるべきか」——サイバーエージェントが語る
サイバーエージェントが「『表現の創造』から『企業文化の創造』へ——企業の未来に寄り添うこれからのブランディングのあり方」を宣伝会議誌上で語っています。クリエイティブ組織がAI時代に守るべきものと変えるべきものを論じた内容として注目されています。
主観:「表現の創造」から「企業文化の創造」へという言葉の転換が鋭い。クリエイティブの仕事が「何を作るか」から「どんな文化を育てるか」に移行しているという宣言です。制作会社としての自己定義を問い直す視点として、深く考えたいテーマです。
③ 「ブレーン」リブランディング特集——「デザインの前に品質を磨く」LCCの事例
宣伝会議「ブレーン」10月17日更新のリブランディング特集で、LCCのブランドリニューアル事例が掲載されました。「デザインの前に品質を磨く」という逆張りの姿勢と、主要事業売却後のブランド再構築のプロセスが語られています。経営者との対話から潜在的な課題を掘り起こし、社内外を動かすロジックとストーリーをどう組み上げたかを取材しています。
主観:「デザインの前に品質を磨く」——この一言が今日の朝刊で最も重い言葉かもしれません。見た目を変える前に中身を変える。コピーを書く前に商品を磨く。クリエイターが「外側」だけを変えようとする誘惑に対する、正直な反論です。
④ 「にじみ出るブランドらしさ」——博報堂が語るAI時代のブランディングの未来
博報堂の中島氏が「これまでブランドは『いかに発信するか』に主眼を置いていたが、未来は『にじみ出てくるブランドらしさ』が主流になる」と語っています。膨大な対話の中でブランドらしさがにじみ出て、それが総体として「ブランド体験」になるという時代の到来を予測しています。
主観:「発信する」から「にじみ出る」へ——この言葉の転換が面白い。コピーライターが作るのは「発信する言葉」でしたが、これからは「にじみ出る人格の設計」になっていく。「書く」仕事が「設計する」仕事に変わる転換点として、今日最も考えさせられた言葉です。
① 電通CD・花田礼氏「スワイプされない広告の作り方」——現場の核心を語る
日経クロストレンドが電通CDの花田礼氏にインタビュー。スマートフォンで広告がどんどんスワイプされてしまう環境下で、「どうやって止まってもらうか」という問いへのクリエイターの答えを語っています。
主観:「見てもらう」ではなく「スワイプされない」——言葉の向きが逆になると設計が変わります。「止まってもらう」と「通り過ぎられない」は似て非なる発想です。来週以降、詳細が公開されたら深掘りしたいインタビューです。
② LA拠点CD・曽原剛氏「グローバルで通用するクリエイティブの核心」——Apple・Airbnbを手がけた日本人CDが語る
米ロサンゼルスを拠点に、Apple・Twitter・Airbnbなどを手がけてきた日本人クリエイティブディレクター・曽原剛氏のインタビューが掲載されています。渡米から20年、グローバルで通用するクリエイティブとは何かを語っています。
主観:「グローバルで通用する」とは「普遍的な感情に届く」ということと同義のはずです。文化の違いを超えて人を動かす言葉や映像には何があるか——大阪・関西から世界を見る視点として、積極的に追いたいテーマです。
③ 「東大も新設『デザイン学部』とは」——アカデミアがデザインを本気で扱い始めた
東京大学が新設する「デザイン学部」が注目を集めています。日本の最高学府がデザインを独立した学問領域として位置づける動きは、業界全体への影響が予想されます。
主観:「デザインは感性の仕事」から「デザインは思考の仕事」へという転換が、アカデミアレベルで起きています。デザインが経営・政策・社会設計と同じテーブルに乗る時代——制作会社として「デザインとは何か」を改めて言語化しておく必要があります。
「当事者に受け入れられるか」——広告の最初の問いに戻る
今日の朝刊で最も印象に残ったのは、厚労省のタイアップ広告ガイドラインの一文です。「当事者に受け入れられるか」「誤解や偏見を助長する恐れはないか」——これは行政が炎上を受けて作った規則の言葉ですが、実は広告の本質を突いています。
「当事者に受け入れられるか」——これはインサイトの問いと同じです。そもそも、広告は嫌われています。だから、生活者の感情と状況を理解せずに作られた広告は、たとえ良い意図があっても「ズレている」と受け止められます。そのズレが炎上の火種になります。
官公庁が炎上してガイドラインを作るまで気づかなかった問いを、優れたコピーライターやCDは最初から問い続けています。「この言葉は、この人に届くか」「この表現は、この人を傷つけないか」——そういう想像力の積み重ねが、クリエイターの仕事の核心にあります。
先週のピックアップ「正直であること、誠実であることは最初で最後の砦」と同じ場所に、この問いは繋がっています。
以上、本日の朝刊でした。
それでは本日も1日、ページワンスタジオをどうぞよろしくお願い致します。
謹んで新年のお慶びを申し上げます。
旧年中は格別のお引き立てを賜り、誠にありがとうございました。
昨年も弊社の広告制作物が、2025年日本産業広告賞雑誌部門にて第3席の評価をいただきました。
弊社は本年も引き続き、デザイン・クリエイティブの力で、お客様のビジネスをしっかりと支援してまいります。
2026年も変わらぬご愛顧のほど、何卒よろしくお願い申し上げます。
2026年 元旦
株式会社ページワンスタジオ
代表取締役 青木 唯史