The PageOne Times

# The PageOne Times 6/29 朝刊

6月29日(月)おはようございます。ページワンスタジオです。
本日も、クリエイティブ業界の動向をざっとみていきましょう。

#今日の世の中の空気

何度繰り返すと気が済むのだろうか。米・イランが攻撃停止で再度合意し、30日に仲介国のカタールで協議が行われるという報道が入ってきた。中東緊張の本格的な緩和が現実味を帯びてきたと言われるのは今回が何度目だろうか。いい加減にしてもらいたいところだ。さて、月曜日だ。高市内閣の支持率は68%とほぼ横ばいで安定。経済面では脱ナフサへのバイオ素材支援として経産省が補助拡大を検討するなど、ホルムズ危機を受けたサプライチェーン再編が静かに進んでいる。W杯は決勝トーナメントが始まり、日本代表の次戦を待つ「熱狂の小康状態」に入った週。そしてカンヌライオンズ2026が先週閉幕し、今週から受賞作の分析・議論が業界を席巻し始める。「中東和解・W杯・カンヌ余波」という気流の中で始まる新しい週だ。

では、世の中のことをざっとおさらいしたところで、クリエイティブ業界ではどういう動きがあったのでしょうか。さっそく見ていきましょう。

#広告・CM・宣伝・デザイン

① カンヌライオンズ2026総括——「Creative Brand Lion」が示す時代の転換
カンヌライオンズ2026が26日閉幕した。今回の最大のニュースは、新設された「Creative Brand Lion」の初代受賞であろう。個別の広告キャンペーンではなく、創造性を再現性高く生み出す組織文化・意思決定プロセス・体制を持つブランドを表彰する部門で、全応募の10%がエージェンシーではなくブランド企業からの直接応募となった。
主観:「良い広告を作る」から「良い広告を生み続ける組織を作る」への転換が世界最大の広告祭で公式に認められた。デザイン制作会社として「一本の仕事」より「クライアントのクリエイティブ体制そのものを強化する」提案ができるかが問われている。

② マツダ「80歳の女性とRX-7」——Entertainment部門グランプリの衝撃
マツダがカンヌライオンズ2026のEntertainment部門でグランプリを受賞。80歳で免許を返納する女性が25年連れ添ったRX-7をマツダに託す実話のドキュメンタリー。車を商品でなく「大切な友」として送り出し、その後は広報車として新たな人生を歩ませる内容。日本の制作会社LUCKが手がけた。
主観:「車を売る広告」ではなく「車との人生を語るドキュメンタリー」。商品の機能を一切語らずに、ブランドへの深い愛着を生む。事実が最強のコピーであることを改めて証明した一本。「作り手が見つけるべきは商品の特徴ではなく、商品にまつわる人間の物語だ」というコピーライターへの示唆でもある。

③ ヤングライオンズ2026日本代表——「引き算と断定力」がゴールドを取った理由
カンヌライオンズのオフィシャルプログラム「ヤングライオンズコンペティション」プリント部門の国内予選で、読売広告社の田畑良氏と博報堂アイ・スタジオの奥村浩平氏のペアがゴールドを受賞し日本代表に。152作品の頂点に立ったコンセプトは「引き算と断定力」と評された。
主観:「引き算と断定力」——この二つが若い世代のコピーライターが世界で評価されたキーワードだ。足すことより削ること、迷うことより言い切ること。今週話してきた「だから続ける。」という一文と同じ方向性を指している。

#広報・PR・マーケティング

① 「ブランドマーケティング」の誤解——広告専任体制が生むゆがみ
英マーケティング誌の分析として、企業がテレビ広告や屋外広告の専任部署を作り「ブランドマーケティング」と呼ぶことで、本来のブランド構築から乖離するゆがみが生まれているという議論が注目されている。
主観:「広告をやっていればブランドが育つ」という思い込みはもはや前時代的なのかもしれない。広告は手段で、ブランドが目的。その順序を間違えると、予算は使っても積み上がるものがない。クライアントへの提案でも常に意識しておきたい視点である。

② 裁量労働制の拡大議論——「自分の頭で考える」クリエイターへの影響
高市首相が推進する裁量労働制の拡大について、日経ビジネスが「会社組織や1日8時間労働は人類の歴史から見ればごく最近の出来事」という視点で深掘り。働き方の自由度を高める制度として議論が活発化している。
主観:クリエイティブの仕事ほど「時間で管理される」ことと相性が悪い。アイデアは8時間の労働の中だけで生まれるものではなく、また、散歩中や風呂の中でも生まれる。裁量労働制の拡大は、クリエイティブ人材の働き方設計に影響がでるであろう。

#デザイン・クリエイティブ

① カンヌ受賞作「The Ordinary」——元素周期表で美容業界の嘘を暴く
スキンケアブランド「The Ordinary」がカンヌで高評価を得たキャンペーン。元素周期表を想起させる図像に「毛穴レス」「シワ改善」「永遠の若さ」という美容業界のパワーワードを記すことで、業界の誇大表現を逆手に取った。
主観:「業界の常識を批判することで、ブランドの誠実さを証明する」という設計。競合他社を直接攻撃せずに、業界全体の慣習を皮肉ることで差別化する。コピーの「間接的な比較訴求」の高度な応用形として学べる。

② カンヌ受賞作「Hawkstone Beer」——ジェレミー・クラークソンの6週間ビール
ジェレミー・クラークソンのビール「Hawkstone」が、業界平均9日のところ6週間かけて作ることを彼らしいユーモアの映像で表現。「作るのは大変、飲むのは簡単」を広告でなくエンタメとして見せた。
主観:製法の「手間」をユーモアに変えることで品質の証明にしている。「丁寧に作った」という事実をそのまま言うより、クラークソン流の毒舌で語る方が記憶に残る。語り口が商品の個性と一致しているとき、広告は最も強くなる。

#今日の編集部ピックアップ

マツダ「80歳の女性とRX-7」——事実が最強のコピーである

先週閉幕したカンヌライオンズ2026のEntertainment部門グランプリ作品は、多くの示唆を持っている。

80歳で免許を返納する女性が、25年連れ添ったRX-7をマツダに託す。マツダはその車を廃車にせず、広報車として新たな人生を歩ませる。これは実話だ。コピーライターとして一番の学びは、「この企画にコピーは必要なかった」という点だといえる。

「マツダは車を大切にする会社です」とわざわざ言う必要はない。「25年連れ添った車を受け取り、新たな命を吹き込んだ」という事実が、そのメッセージをすべて物語っている。

「何を言うか」より「何をするか」がコミュニケーション基軸となる時代——これをマツダが提示した。だが逆説的に、「何をするか」を選んで言語化するのはやはり人間の仕事だ。80歳の女性とRX-7という「事実の中の物語」を見つけた人間がいたから、この受賞がある。

コピーライターの仕事は言葉を考え、また言葉を必要としない「事実を見つけること」かもしれない。

以上、本日の朝刊でした。
それでは本日も1日、ページワンスタジオをどうぞよろしくお願い致します。

謹んで新年のお慶びを申し上げます。
旧年中は格別のお引き立てを賜り、誠にありがとうございました。

昨年も弊社の広告制作物が、2025年日本産業広告賞雑誌部門にて第3席の評価をいただきました。

弊社は本年も引き続き、デザイン・クリエイティブの力で、お客様のビジネスをしっかりと支援してまいります。

2026年も変わらぬご愛顧のほど、何卒よろしくお願い申し上げます。

2026年 元旦
株式会社ページワンスタジオ
代表取締役 青木 唯史