
おはようございます。10月16日(金)です。
デザイン事務所ページワンスタジオが提供する The PageOne Times。
昨日おこったクリエイティブ領域の出来事をピックアップしてお伝えします。
昨日の日経平均3318円安は、1987年のブラックマンデー以来となる史上3番目の下げ幅でした。米コアウィーブへの信用不安とCPIショックが重なった一日でしたが、今朝のナスダックは上昇に転じています。市場が「AI設備投資の持続性」を問い始めた週として記憶されそうです。
台風30号が発生し、今後の情報に注意が必要です。また「うるう秒」廃止が国際度量衡総会で決定しました。1972年から半世紀以上続いた「時間の微調整」が終わります。そしてEUが中国製ハイブリッド車などの輸入を大幅制限へ。
本日は映画『ストリートファイター/ザ・ムービー』が全世界同時公開を迎えます。カプコンが30年越しで挑む本格的なIPのグローバル展開として、エンタメ業界が注目しています。「株安・台風・うるう秒廃止・ストファイ公開」という金曜日です。では本日も、クリエイティブ業界の動向をざっとみていきましょう。
① カプコン『ストリートファイター/ザ・ムービー』本日全世界同時公開——IPの30年越しのリベンジ
1994年の実写映画版が「黒歴史」とされてきた「ストリートファイター」が、レジェンダリー・ピクチャーズとカプコン総監修で本格的な実写映画として本日公開されます。日本人監督キタオ・サクライが監督を務め、ゲームへの忠実さを重視した作りとなっています。ローソンなど各所でタイアップも展開中。
主観:「失敗したIPを再挑戦でリブランドする」という設計の教科書です。30年という時間が「黒歴史」を「伝説」に変え、新作への期待感を高めました。「待たせた時間」がブランドの資産になる——コンテンツIPとブランディングの接点として学べます。
②カプコン「ワンコンテンツ・マルチユース」——ゲームIPを映画・グッズ・コラボに展開
カプコンはストリートファイターを軸に「ワンコンテンツ・マルチユース」戦略でIP価値の拡大を図っています。映画公開に合わせ、ゲーム内特典・ローソンタイアップ・特別デザインカード・アニメスタイルの映像など複数の接点を同時展開しています。
主観:「一つのIPをいかに多くの接点で語るか」という設計です。映画・ゲーム・コンビニ・グッズが全て同じ世界観を共有している。これはまさに「BRAND × AMPLIFY」——ブランドが社会の中で増幅されていく設計の見本です。
③Agoda「トラブル解決より先にCM」——旅館業界が注意喚起、観光庁も改善要請
観光庁がAgodaに改善要請してから1年半が経つも改善が見られないとして、温泉旅館がSNSで「Agodaを使わないで」と注意喚起を行い話題になっています。
主観:「CMを流しながらトラブルを放置する」ことへの生活者の怒りが可視化されました。広告投資とユーザー体験の品質が乖離したとき、広告は信頼を損なう道具になります。昨日のピックアップ「信頼は行動が作る」がそのまま当てはまる事例です。
④ドイツ市場開拓——デパートで日本産のコメを試験販売
ドイツ市場開拓に向けて、現地デパートで日本産のコメの試験販売が始まりました。
主観:「コメ」という日本の日常食材がドイツの高級デパートでプレミアム商品として売られる。ローカルの本物がグローバルで価値を持つ時代のもう一つの事例です。「何を売るか」より「どんな文脈で売るか」がブランドの価値を決めます。
⑤ サイゼリヤ株、一時14%急反発——「値上げ発表」がなぜ株高を生んだか
前日に6%値上げを発表したサイゼリヤの株が一時14%急反発しました。
主観:「値上げ=客離れ」という消費者目線と、「値上げ=収益改善」という投資家目線の非対称性が面白い。同じ事実がステークホルダーによって正反対に受け取られます。「誰に向けて語るか」でコミュニケーションの設計が変わる典型例です。
①「タイムズカー情報流出、信用機関に悪用防止要請殺到」——漏洩後の広報対応が問われる
タイムズカーへの不正アクセスによる個人情報漏洩を受け、信用機関への悪用防止要請が殺到しています。クレジットカード発行にも手間がかかる事態となっています。
主観:漏洩発覚後の「何を・いつ・どう伝えるか」という危機広報の設計が問われています。生活者が取るべき行動を分かりやすく伝える——これはコピーライターの仕事でもあります。「謝罪コピー」より「行動を促すコピー」の方が生活者には有益です。
② 「市場揺らすコアウィーブとは」——日経がAIインフラ企業の実態を解説
日経新聞が「市場揺らすコアウィーブとは。AI設備レンタルで拡大、NVIDIAが後ろ盾」という解説記事を掲載しました。昨日の急落を受け、AIインフラへの過剰投資への懸念が改めて議論されています。
主観:「AIへの熱狂」が「AIへの懐疑」に転換する局面は、クリエイティブ業界にも影響します。「AI活用」を売りにしてきたサービスや代理店が、投資家・クライアント双方から「本当に効果があるのか」と問われる時代が来ています。
③ 「Agoda問題」——OTAと宿泊施設の信頼構造が崩れている
旅館業界のAgodaへの不信感が「使わないで」という直接的な消費者への呼びかけになっています。プラットフォームと事業者の関係性が生活者の目に晒される構造になっています。
主観:プラットフォームへの依存が高まるほど、プラットフォームとの関係が「ブランドの信頼」に直結します。「どのプラットフォームに出るか」は、もはや販路の話ではなくブランド設計の話です。
④ 「出産費用の無償化」27年度後半から——少子化対策の新しいコミュニケーション機会
出産費用を公的医療保険で賄う新制度が27年度後半にも始まる見通しです。現行の50万円から増額される方向で検討が進んでいます。
主観:少子化対策の政策が変わると、マタニティ・育児関連ブランドのコミュニケーション文脈が変わります。「費用の不安」から「育てる喜び」へと訴求軸を転換するタイミングが来る可能性があります。
⑤ネットフリックス、従業員約1000人を削減へ——コンテンツ業界の再編加速
ネットフリックスが従業員約1000人の削減を発表しました。コンテンツ業界の再編が加速しています。
主観:コンテンツプラットフォームの選択と集中が進む中、「どのプラットフォームでコンテンツを届けるか」というブランドの判断がより重要になります。削減される側と残る側の違いが、これからのコンテンツ戦略の方向性を示しています。
① TOKYO MIDTOWN DESIGN LIVE 2026——本日開幕、「日常がおもしろくなるデザイン」
東京ミッドタウンで「TOKYO MIDTOWN DESIGN LIVE 2026」が本日10月16日から11月4日まで開催されます。「あたりまえの日常がおもしろくなるデザイン」をテーマに、様々なクリエイターが参加するイベントです。
主観:「日常をおもしろくする」というテーマは、広告やコピーの本質と同じです。生活者が気づいていなかった日常の面白さを発見させること——デザインの力も、コピーの力も、その点では同じ場所を目指しています。
② 虎ノ門広告祭2026——本日最終日、「あ、この言葉、気になる展2」が示すもの
10月9日から17日まで開催の虎ノ門広告祭2026が最終日を迎えます。佐藤可士和・中村勇吾・MIKIKOら500人超が登壇した168セッションに加え、展示企画「あ、この言葉、気になる展2」が昨年に続いてSNSで話題になりました。キービジュアルのコピーは「むしろ、広告祭」。
主観:「あえて広告祭」から「むしろ広告祭」へのコピーの進化が面白い。「あえて」は抵抗を示す言葉で、「むしろ」は逆説を示す言葉です。2年目で「広告であることの誇り」がより深まった印象があります。コピー一語の選択が、ブランドの成長を物語っています。
③ 「alter. 2026, Tokyo」10月29日開幕——次世代55名のクリエイターがプロダクトデザインを更新
次世代を担う55名のクリエイターが12組のチームを組み、プロトタイピングとコラボレーションを通じてプロダクトデザインの価値を更新するイベント「alter. 2026, Tokyo」が10月29日から4日間開催されます。グローバルなデザインシーンを牽引するコミッティによる審査を経て選出された顔ぶれです。
主観:「チームを組んでコラボレーションする」という設計が面白いです。個人の作品展ではなく、異なる領域のクリエイターが掛け算を起こす場——広告制作でも「コピー×デザイン×映像」の掛け算がクリエイティブを飛躍させます。次世代の感性を見ておく意味でも注目したいイベントです。
「正直であること」「誠実であること」は、最初で、最後の砦
今週の朝刊を振り返ると、図らずも同じ問いが何度も浮かび上がりました。「正直であること」と「誠実であること」が、ブランドを守る最後の手段になっているという話です。
ビール大手4社のカルテル疑惑。止まらない個人情報の漏洩。Agodaへの不信感。広告を打ち続けながら、信頼を失っていった企業が今週だけでいくつも並びました。
一方で、サイゼリヤは値上げを正直に発表して株価が急反発しました。パナソニックはリコールを迅速に公表しました。タイムズカーは漏洩の事実を隠さずに開示しました。
同じ週に、正直に語った企業と、そうでなかった企業の明暗が、これほどはっきりと並んだことは珍しい。
広告は幻想を作ります。ブランドイメージという幻想が、生活者の信頼感の一部を担ってきたことは確かです。でも信頼感はあくまで感覚であり、印象です。行動ひとつで、いとも容易く崩れ去ります。
AI時代に入り、言葉もビジュアルも大量に作れるようになりました。上手い言葉は、これからさらに安く・速く・大量に生産されます。だからこそ「正直な言葉」と「誠実な行動」の希少価値が、逆説的に高まっています。
「正直であること」「誠実であること」は、戦略でも手法でもありません。ブランドが最後に頼れる、最初で最後の砦です。
以上、本日の朝刊でした。
それでは本日も1日、ページワンスタジオをどうぞよろしくお願い致します。
謹んで新年のお慶びを申し上げます。
旧年中は格別のお引き立てを賜り、誠にありがとうございました。
昨年も弊社の広告制作物が、2025年日本産業広告賞雑誌部門にて第3席の評価をいただきました。
弊社は本年も引き続き、デザイン・クリエイティブの力で、お客様のビジネスをしっかりと支援してまいります。
2026年も変わらぬご愛顧のほど、何卒よろしくお願い申し上げます。
2026年 元旦
株式会社ページワンスタジオ
代表取締役 青木 唯史